選手カルテbQ.  選手は、なぜ辞めるのか?

Jボーイズは辞める選手が少ない
 今回は、選手がチームを辞めていくことについて考えたいと思います。Jボーイズは、創設3年目です。
 去年入部した1年生は18人ですが、辞めた選手はいません。辞める選手がいない初めての学年となります。

 この2年間で、うちのチームを去っていった選手は5名です。すべて初年度です。うち2名については、他のチームに所属して2年生になって辞めてきた選手で、他チームで「心の痛手」を背負い、故障もあり、野球に対しての気持ちはすでに燃え尽きていた感がありました。
 そういう意味で言えば、Jボーイズは、他のチームに比べて辞める選手は少ない方といえます。これは自慢できることです。
 指導者のフォローもありますし、保護者とのコンタクトも取りながら進めてきているからだと自負しています。
  
怪我・故障で選手は、モチベーションを失うことも多い 
 他の3人は肩、肘痛とか、長期の休部または、練習ができないためにモチベーションが下がり、他の道を探した選手です。ただ、この3人ともその後、学校のクラブや勉強に頑張っています。ボーイズ等の野球を辞めた多くの子どもたちが茶髪や遊び・非行等に走る中、しっかりと目標をもって親御さんともきっちりと話し合った結果、その後の中学生活も頑張っていけたのでしょう。
 しかし、中学の野球では成長の過程であり、怪我で休み、「遊び」を覚えてボーイズを辞めていくことも多くあります。

 ですから、Jボーイズでは、怪我のフォローを重要視して保護者の方と連携をとりながら選手たちのモチベーションを下げないようにしています。
 現場で、監督がストレッチを強く指導しているのもJボーイズの特色ですが、それは怪我でリタイヤする子どもが多くいることからです。そのことを監督はよく理解しています。怪我で選手を辞めさせないという強い意志があります。

 一方、私は、野球は教えることはできませんが、選手を病院や整骨院に連れて行くことなど後方支援をしています。これもJボーイズの特徴です。


「お家騒動」と保護者の影  
 あと、よくある話が私が「お家騒動」と呼んでいることです。
 保護者が代表や監督のやり方が気にいらないと言って、大量に選手が辞めていくことがあります。それぞれの言い分があり、どちらが正しいとは言えませんが、保護者の不満がたまるとそういうことがどのチームでもよくおこります。結成以来、Jボーイズでは起こっていません。

 選手が多いと結果、保護者も多くなります。色々な考え方が出てきます。そこで、考え方の違いを言いあうと収拾がつかなくなってしまうのでしょう。また、現場がエコヒイキをしていると、とられてもめるケースもあると聞きます。
 このように理由は様々ですが、小さな不満の時に気をつけていなければ、ちりも積もればということで爆発すれば終わってしまいます。保護者が辞めるか、フロントもしくは監督が交替するか、色々な形があります。
 
 入ってくるときは、保護者も選手も夢と希望を持ってきます。しかし、現実には色々なことが見えてきたり、理想とは違うことも多いのです。
 Jボーイズでは、他チームでの「お家騒動」の経験を踏まえ、保護者会についてはゆるやかな組織として結成してきました。しかし、選手が多くなると家族的経営から組織的経営へと移っていく過程で保護者会を曖昧な組織と確信犯的に設けている私の考えでは曖昧すぎるということも見えてきました。

 しかし、Jボーイズではフロント、現場、保護者のみんなが「よいチームにしたい。入って良かったと思えるチームにしたい」と思っており、考え方の違いはあってもその点は一致してチーム作りをみんなでやっています。
 綺麗事ではすまないこともありますが、とにかく、子どもの野球で、親同士が考え方の違いでもめたり、フロントと対立するということは避けたいという思いでいっぱいです。
 「子どもは宝」をチームの中心に据えている考え方がありますので、「お家騒動」はJボーイズには無縁です。とはいえ、油断していると親しき仲にも礼儀あり、「協力」がなければチームは存続できません。そのことも皆さん承知で頑張っています。

「遊び」の誘惑に負けるな!!
 怪我・故障またはサボり、きっかけは色々ありますが、友達環境が野球を遠ざけるケースもあります。少し、野球を離れると練習がきついので、元にもどるまでに時間がかかります。その時に、「遊び」の誘惑が出てきます。女の子と遊んだり、少し悪びれるのは純な野球選手にとってとは魅力的なものです。一度、変な「遊び」を覚えるとなかなか野球には戻ってきません。
 
 ですから、Jボーイズでは親御さんにどんな些細な変化でも私に伝えてくださいと言っています。現に、今、いる選手も卒団した選手も何人もが一度は辞めたいと言ってきました。しかし、監督や私が選手や保護者と話し合う中で、ずっと続けてきています。
 野球を続けていくことが、うまくなるよりも大切であることを監督自身が一番知っています。続けていれば、大学まで野球をすることもできるし、達成感もあります。ですから、そういう思いを伝えることで辞めたいと口にした選手がJボーイズでは成長しています。

 「遊び」の誘惑に負けないことは、休ませないことが近道です。また、保護者と連携してその誘惑を摘み取ることも大切です。

 限界を感じるのが早すぎる今どきの子ども
 今時の子どもは、すぐに「限界を感じた」と言います。我慢が足りないのですね。自分なりには一生懸命にやっているのでしょうが、「もうこれ以上できない」とか、「なんぼ練習しても成果がでない」とか。簡単に物事を決めつけてしまいます。

 私たちの考え方は、結果として中学の野球で上手くならなくてもよいのではないのですか?と保護者に問いかけています。なぜならば、ここで完成するよりも、大人になる過程で成長を続けられることの方がもっと大切だと思っているからです。

 人間、ちょっとの努力で成功することはありません。楽天の野村前監督は、楽天に就任して2年目の秋のキャンプで訓示を述べました。その内容は、「軽々しく限界を口にするな。誰よりもバットを多く振ったのか、誰よりも一生懸命考え抜いたのか、イチローは天才だが、努力を惜しまない、天才が努力するから君らよりずっと高いところにいる。だから追いつけない。君らはもっともっと努力しなければならない。もう、これ以上、努力できないというところまでやって、初めて限界が分かる。」と説教しました。

 当時の楽天といえども、プロ野球選手です。選手は類い稀なる体力、精神力を持っています。その彼らをしても努力することの大切さを説いて、弱小チームを強いチームにしたのです。
 
 プロになっても努力する、そして、限界を口にするなと言われる。まして、中学生は、体も精神力も大人ではなく子ども。発展途上の成長過程です。軽々しく限界などと語ってほしくありません。

 その前に、どんな努力をしたのか、まだ、Jボーイズ入って野球して1〜2年です。高校ではもっともっと厳しいことが要求されます。ここで、くじけては高校で野球などできません。

辞めさせてはだめ。 ずーと野球を続けさせる環境を!!
 指導者としては、もっともっと頑張ってほしいと思うし、何より野球を辞めさせるということが、また、選手から辞めたいと言われることが一番つらいのです。

 これからも辞めたいという選手が出てくるかもしれませんが、私たちの指導方針としては、「来るもの拒まず、去る者追う」です。辞めたいという前に心のアンテナをはりめぐらせて、小さい迷いの芽を摘み取り、「成長」と言う木になってほしいと願ってやみません。

 さぁ、これからもずーと野球を続けていこうよ!! 野球は楽しいよ!!